私自身にも2人の子がいます。いま、小学生と高校生です。
「多感」といわれる年頃の子供と、親として指導者として向き合うたびに、彼らが持つエネルギッシュで繊細な思いに圧倒されることもしばしばです。
子供だと思って、いつまでも子ども扱いすると…やっぱりへそを曲げますね。
人間対人間として、誠実に真摯に彼らの思いと向き合いたいと思う日々です。
伸び悩みの原因は「真面目さ」!?
とても真面目で責任感も強く、指示されたことや自分でやると決めたことは、誰が見ていなくてもきっちりやる女子生徒がいました。
コツコツ努力を重ねられることは素晴らしいことです。
そういう子になってほしい!という願いを持つ親御さんもたくさんいらっしゃることを、よく知っています。
ただ悩みは誰にでもあるもの。この生徒も例外ではありませんでした。
-『どうして思うように上がらないの?』
-『頑張っているのに、こんなに頑張っているのに!』
全く上がらなかったわけではありません。少しずつではありましたが順位は上向いていました。
ただ本人にしてみると、その上がり方が自分の努力に比例していないように感じていたのです。
ひとつの要因は、彼女自身の「生真面目さ」。
・ひとつひとつを完璧に仕上げようとするあまり、なかなか先に進めない。
・ひとつひとつを丁寧にやりたいため、時間がかかる。実際、テストでは最終問題の前に時間切れになることも。
・暗記は完璧、でも「覚えること」で止まってしまうため、実際に問題を解く段階で暗記した知識を活かせない。
中3の1学期までは、ある意味「一夜漬け」の学習でもテストは何とかなります。
>>詳しくは「目減り現象」をご覧ください。
ところが中3の2学期からはそうはいかなくなります。ここまで覚えてきた基礎知識同士をつなげ、使いこなし、応用問題といわれるものに対応していく必要があります。
ここにこの生徒の“壁”が存在していました。
生真面目さを活かした勉強法に切り替える
ただ前述したような理屈(『目減り現象』)は、高校受験のプロである我々だからわかっていることです。
15歳の中学生が「今までと同じように頑張っているのに!どうして今までのように上がらないの?」…いらだちを隠せない、葛藤の日々が始まりました。
いら立ちは勉強にもよくない影響を与えます。
私はことあるごとに、心配する必要はないと伝え続けました。
上がり下がりが大きいと心配になる気持ちはよくわかります。でも彼女の頑張りと、努力できる才能と、そしてここまでの積み重ねを知っていますから、私は心底から信じました。
もちろん、精神論で突破できるほど受験は甘いものではありません。
実際に取り組み方を改善していく必要はあります。
トップを頼ってくれ、自習室にも毎日通い始めたこの生徒に、私は一つひとつ具体的な改善点を伝えていきました。
今度は生真面目さが活きる番です。
彼女は、私が伝えたやり方を実直に素直に取り組み続けてくれました。
例えば、それまで間違えた問題は赤ペンで正解を書き込んで終わり、としてしまっていた勉強法も、「なぜその答えが正解になるのか?」という視点できちんと解説を読むようにする等、地道な改善を重ねます。
一方で、親御さんも心配していました。子供のいら立ちというのは、親にも伝わるものですからね。
毎週火曜と金曜の授業前にお弁当を届けに来てくれていたお母さまと必ず顔を合わせ、今の取り組み状況を逐一お伝えしていきました。
取り組みの質が変わり始める、そして…!
冬になると、自分がやるべきこと(大人の言葉でいうと“今日のTODOリスト”ですね)を自習室の机に貼っていたり。
ずっと苦手としていた理科も新しい勉強法がはまり、「できるようになった!」と笑顔で友達と話していたり。
すっかり見違えた姿で、生き生きと目的をもって取り組むようになりました。
そして迎えた、学校で出願校決定の参考にされる大事な1月の総合テスト。
ついにやりました、自己最高順位です。
そしてずっと「無理かな…」と言っていた高校の合格圏内にも入ることができました。
生真面目なコツコツ努力が実を結んだ瞬間です。
本番ももちろん合格。
高校に合格者番号が掲示される発表日朝8:30直後に、泣きながら合格を知らせる電話がかかってきました。
「親はやきもきするばかりでしたが、トップに行ってくる度にたくましく自信を持った顔つきになってくる娘を見て、トップは娘の心のよりどころなのだと確信しました」お母さまも目頭を潤ませながら、そういってくださいました。
今年も生徒たちの心に真剣に誠実に寄り添い、春の笑顔に向けて進みたいと思います。